季節ごとで変わる太陽の位置を考えて設けた「庇」が機能し、太陽が高く昇る暑い夏場には日射を遮り、太陽が低くなる冬場には屋内へやさしい光を届けます。

土間などに用いられた蓄熱材（コンクリートやタイル貼り）が、日中に太陽熱を吸収し、夜に向けて放熱していくので、室内温度の変化をゆるやかにします。

風の出入りと通り道を考えた設計で、快適性をコントロール。涼しい風は下から取り込みやすくし、温もった空気は上から逃がしやすくします。

樹木は周辺にやさしい冷気（そよ風）をつくります。南側の窓辺に広葉樹を植えれば、生い茂った葉が夏の日差しを遮り、葉が落ちる冬は室内に光を届けます。

単一でない木目が美しい、日本の杉。時間の経過とともに自然と色は濃くなり、暮らしていく中で傷もつきます。
そんな変化を“経年美”として味わい深く感じられることは、杉が持つ魅力のひとつです。

杉は空気を含みやすく、軽くてやわらかく、肌触りが良いという特性を持ちます。例えば、ジメジメしがちな梅雨時期も、杉材であればサラリとした感触に。そうしたことが体感温度にも影響し、心地良い暮らしを支えてくれます。

フローリングに使われる素材の寿命は一般的に15年程度。ですが、無垢の杉を使った床はメンテナンスをすることで永続的に使うことができます。日々のお手入れも手軽で、定期的な蜜蝋ワックスがけで深い艶を帯び、愛着が増します。

日本の山には、たくさんの杉が育まれています。それを住まいに用いることで、わたしたちの暮らしと密接に関わる自然環境に意識を向け、ライフスタイルや行動を見つめなおすきっかけにしていただければと思っています。